「サークルの飲み会からの帰宅途中だったんですけど、なんと、スマホを置いてきてしまったことに気づいて…。家の近くだったから、電話ボックスのある場所、なんとなく覚えてたんですよ。

電話帳って毎年新しいものを届けてもらうけど、〝こんなもの、誰が使うんだろう。なんだってネットで調べられるのに…〟って思っていたんですけど、…今分かりました。今の私みたいに、スマホを出先で落としてしまったときに、この電話帳はライフラインになるんだなあ、と。

それで、さっきまでサークルのみんなと一緒にいた居酒屋を電話帳から調べて電話しました。〝先ほど利用していたものだけど、スマホの落とし物がないかどうか、調べてください〟って言ったら、〝トイレにそれらしいスマホがありました!〟と答えがあったので、とりあえず安堵して、〝じゃ、今からUターンで取りに行きますから、取っておいてください!〟って自分の名前を告げました。タクシーで行けば、15分くらいで着くかな、と考えながら…。

そのとき、電話ボックスのガラスのドアがいきなりトントン!ってノックされたんです。やだなあ、もう、使いたいのかしら…?電話ボックスなんか同時に使いたい人がいるとは思わなかったらものすごく心外…。〝ちょっと待ってください、今すぐ済みますか…〟

そう、扉を開けて告げかけた途端、私。口を開けてアングリ。

ノックしてた男、なんとコートの下は真っ裸!しかも股間のあたりをぐりぐりガラス扉に押しつけて見せつけてたんですよ…。その気味悪さといったら、もう…!

うぎゃあ〜!とかどひい〜!とか叫んで、電話ボックスから飛び出して、もうスマホのこととかいっぺんにアタマから消し飛んでしまって、きっと受話器なんか、外れっぱなしだったでしょう、居酒屋のスタッフ、〝あれ?どうしました!?〟なんて慌ててたに違いないんだけど、私、とにかく走って走って、走りまくって自宅そばの交番に駆け込みました。

〝どうしましたか?〟冷静な声で聞いてくるお巡りさんに、〝今、今、私、そこの電話ボックスで…〟

話しながら、ふと、そのお巡りさんの顔を見て、…戦慄。その顔は紛れもなく、さっきの露出狂の男の顔に瓜二つだったんですよ…!

そのお巡りさん、心なしかニヤニヤしながら、〝どうしたの?何があったの?聞いてあげるから言ってごらん〟って…。

うわああ〜!!私、走って走って自宅に駆け込みました。すぐに鍵を閉めて、しばらくは心臓のドキドキが止まりませんでした…。なんか、こんな怪談を聞いたことがあったな。むじな沢の話だっけ…。なんて考えていました」。

それはずいぶん、怖い思いをされたのねえ。無事に逃げ帰れてよかった。でも、いくらなんでも、その露出狂の変質者と、お巡りさんが同一人物とは考えずらいわね…。たまたま似た風貌の人だったのかしら?

考えられるのは、居酒屋であなたが少し酔ってしまっていたんじゃないか、ってこと。スマホも置いてきてしまっていたというから、可能性として考えられないことじゃないと思うのよ。

露出狂の変質者に出会ってしまったのは、多分、酔った上での幻影ではなくて事実だったと思います。お巡りさんがその男に似ていたというのは、同一人物でなかったにせよ、グル?…なんてのも、あり得ないわね。小説だったらあるかもだけど…。

帰宅途中、立ち止まって何かする行為は、たとえ、そこが電話ボックスだったにせよ、感心できません。今後は飲み会のときも、正気で家まで帰れる範囲までで飲酒はストップしましょうね。帰り道は早足で、寄り道せずに真っ直ぐ!が鉄則よ。